トップ画:Sawaki Suushi (佐脇嵩之) – scanned from ISBN 4-3360-4187-3., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3518822による
「雪女」は日本の妖怪の中でも有名な存在として知られています。
雪女は、雪国を中心に伝わる伝承で、白い着物をまとった美しい女性の姿で現れるといわれています。
その美しさとは裏腹に、人々を凍死させたり、雪山で遭難させたりする恐ろしい存在として語り継がれてきました。
一方で、人間と恋に落ちたり、家族を持ったりする切ない物語も残されています。
そんな「雪女」について各地の伝承も交えてご紹介いたします。

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雪女とはどんな妖怪?

Toriyama Sekien – scanned from ISBN 4-0440-5101-1., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1992640による
雪女は、雪の降る夜や吹雪の日に現れる女性の妖怪です。
雪国に広く伝わり、その姿は地域によって異なりますが、一般的には次のような特徴があります。
- 白い肌と長い黒髪を持つ美しい女性
- 白装束や白い着物をまとっている
- 冷たい息を吹きかけて人を凍死させる
- 雪や吹雪の中に現れ、姿を消す
- 「雪女郎(ゆきじょろう)」「雪女子(ゆきおなご)」「雪娘(ゆきむすめ)」「雪おんば」「ユキノドウ」などの別名を持つ
雪女の正体については、「雪の精霊」「雪山で亡くなった女性の霊」「産女」「自然の脅威を人格化した存在」など、さまざまな説があります。
雪女の切ない物語
小泉八雲の『雪女』

この物語は、怪談でありながら愛情や約束、別れを描いた切ない物語としても知られています。
現在もっとも有名な雪女の物語は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が1904年に出版した『怪談』に収録された「雪女」 『怪談・雪女』小泉八雲、田部隆次訳です。
昔、茂作と巳之吉という二人の木こりが吹雪の夜に山小屋へ避難しました。
夜中、白い着物を着た美しい女性が現れ、茂作に冷たい息を吹きかけて命を奪います。
しかし若い巳之吉だけは、
「今夜見たことを誰にも話さないなら命を助ける」
『怪談・雪女』小泉八雲、田部隆次訳より
と言われ、生き延びます。
それから数年後、巳之吉は「お雪」という美しい女性と結婚し、多くの子どもをもうけて幸せに暮らします。
しかしある雪の夜、巳之吉が若い頃に出会った雪女の話を妻に語ってしまいます。
すると、お雪こそがあの雪女だったことが明らかになります。
本来なら約束を破った巳之吉を殺さなければなりませんでしたが、子どもたちのことを思い、彼の命を助けて雪の中へ消えていきました。
各地の雪女伝承
雪女には地域ごとに異なる伝承があります。
- 旅人を吹雪の中へ誘い込み凍死させる
- 赤ん坊を抱かせる試練を与える
- 宿を求めて訪れ、親切にすると恩返しをする
- 人間の男性と結婚する異類婚姻譚として語られる
民俗学者の研究では、雪女の伝承には「雪の精霊」「亡霊」「年神(としがみ)」など複数の信仰が混ざっていると考えられています。
雪女の伝承が伝わる地域

雪女の伝承は日本全国に見られますが、
特に雪の多い地域で数多く語られています。
日本各地に伝わる「雪女」の伝承をご紹介いたします。
青森県
雪女が赤ん坊を連れて現れ、人に赤子を抱かせたりする伝承があります。
雪女は通行人に赤ん坊を抱いてほしいとせがみ、その抱いた赤ん坊は岩のようにだんだんと重くなり、抱ききれなくなると殺されてしまい、無事に抱きおおせると怪力を授けてもらえるという。
この伝承は、「産女」の伝承と似ている。
また元旦に現れる年神的な存在として語られる地域もあります。
岩手県(遠野地方)
柳田國男の「遠野物語」からも、小正月や満月の夜に、多くの子どもを連れて遊ぶ雪女の話が伝わっています。
この日になると外で遊んでいる子どもは、日が暮れる前に帰れと注意されたようです。
新潟県
室町時代末期の旅の連歌師である宗祇法師『宗祇諸国物語』には、越後国(現在の新潟県)で巨大な雪女を見たという記録が残されており、雪女伝承の古い記録として知られています。
宗祇法師が越後国(新潟県)で暮らしていた時の二月頃のある夜明けに、便所に行こうと引き戸をあけて東の方を見ると、向こうの竹藪に、身長が一丈(約3.3m)もある妖女が立っていた。二十歳くらいで顔から肌まで透き通るくらい白く、白い単衣の着物を着ている。やがて静かに歩くと見るうちに消えた。朝になってそれを人に話すと、それは大雪のさいにまれに現れるという雪の精霊で、俗に雪女というものだと説明されている。
1691年 宗祇法師『宗祇諸国物語』序文より
山形県(小国地方)
山形県小国地方の、雪女郎(雪女)は元は月世界の姫であった。
地上に興味を持ち、雪と共に地上に降りてきたが、月へ帰れなくなったため雪の降る月夜に現れるという伝承があります。
雪女郎は大勢の子持ち。
さらに子を増やそうと、雪の積もった月の夜に現れ、子どもの声をたよりに村々を廻り、夜泣きする子どもや夜遅くまで起きている子どもを連れ去ったといわれる。
日暮れになっても帰ってこない子どもや、夜遅くまで寝ない子どもらには、雪女のことを語って戒めたという。
長野県
雪女が山姥(やまうば)のような姿で現れる伝承や、人間と結婚する物語が残っています。
岐阜県(揖斐郡)
雪女は「ユキノドウ」という雪の怪物であるとされている。
普段は目に見えないものだが、女に姿を変えて現れるという。
時には雪玉の形をとって現れるという。
山小屋に現れて「水をくれ」と言うが、求めに応じて水を与えると殺されてしまうので、熱いお茶を出すべきとされる。
またこのユキノドウを追い払うには「先クロモジに後ボーシ(いつき)、あめうじがわ(黄牛の皮)の八つ結ばえ、締めつけ履いたら、如何なるものも、かのうまい」と唱えると退散するといわれる。
徳山ダムとなっている徳山村でも、冬季の人気のない時間に女に化けたユキノドウと呼ばれる妖怪が出たとされる。
東京都青梅市(旧西多摩郡調布村)
小泉八雲の『雪女』のモデルになったとされる地域です。
現在も「雪おんな縁の地」として知られています。
まとめ
雪女は、雪国の人々が自然の厳しさや冬の恐ろしさを語り継ぐ中で生まれた妖怪です。
吹雪や遭難への恐怖を象徴する存在でありながら、人間との愛や約束を描く切ない物語も伝えられています。
現代では小泉八雲の『雪女』の影響によって「白い着物を着た美しい女性妖怪」というイメージが定着しましたが、実際には各地で異なる姿や性格を持つ多様な伝承が残されています。
雪女の物語をたどることで、昔の人々が自然とどのように向き合っていたのかを知ることができます。
参考文献
一次資料・古典
・宗祇法師『宗祇諸国物語』序文1691年
民俗資料・地方伝承
・柳田國男『遠野物語』1910年
・柳田國男監修『民俗学辞典』東京堂出版、1951年
・柳田國男監修『総合日本民俗語彙』平凡社、1956年
・ 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)『怪談(Kwaidan)』 1904年
研究書・事典類
・多田克己・京極夏彦 編『妖怪図巻』国書刊行会、2000年
図像資料(妖怪画)
・鳥山石燕『画図百鬼夜行』1776年
・『化物づくし』作者・制作年代、不明
・佐脇嵩之『百怪図巻』江戸時代(1737年)
・『化物絵巻』作者・制作年代、不明(1800年代前半頃?)
データベース
・青空文庫『怪談・雪女』小泉八雲、田部隆次訳 1904年
青空文庫『怪談・雪女』小泉八雲、田部隆次訳
・Wikipedia「雪女」

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