『百怪図巻』作者:佐脇嵩之 制作年代:1737年 現所蔵者=福岡市博物館(旧・吉川観方コレクション)出典「妖怪図巻」国書刊行会

妖怪に興味がある方、オススメ♪
妖怪「山彦(やまびこ)」とは?
妖怪について、ちょっと知りたい方にも読んでもらいたい!
やまびこの正体、伝説などをご紹介。
山彦とはどんな妖怪?
やまびこ現象
「やまびこ」とは、「ヤッホー!」と登山などで山や谷から、音や声が反響する現象をいいます。
現代においては、「やまびこ」の反響現象は科学の視点から解明されていますが、昔の人々は、そうとは思わなかったようです。
昔の人々は、山に棲む妖怪、または山の神、精霊の仕業だと信じていました。
人の声をまねて呼び返す妖怪、精霊が谷山に棲んでいるのだと。
情報も科学もない時代に、反響して返ってきた声や音を、「妖しい」と思い「もののけ」の気配を感じていたのだと思われます。
幽谷響(やまびこ)
鳥山石燕の「画図百鬼夜行」には、「幽谷響」とあります。
幽谷とは、奥深い静かな谷のことで、幽谷で響くと書いて「やまびこ」。

山岡元隣 「古今百物語評判」(1686年)でも「空谷響」「幽谷響」とあり「やまびこ」のことを伝えています。
山や谷、寺院の堂塔などで人の声に応じて響くもの山岡元隣 「古今百物語評判」(1686年)
犬のような顔で、おどけたポーズの山彦

トップ画像「百怪図巻」の山彦も、こちらの「化物づくし」の山彦も、犬のような顔で、おどけた表情で描かれています。
体も犬が立ったような体形で、モフモフして可愛く、ユーモラスな感じです♪
人に危害を加えるような妖怪には見えません。
山彦の伝説
山彦は猿人?「攫」・「さとり」ともいわれる
山彦は、中国に棲むといわれる伝説の猿人「攫(ヤマコ)」と同一視されている。
「攫」は「カク」とも読み、代字として「覚(さとり)」と書かれる」こともあった。
民俗学者の柳田國男は「妖怪談義」に「さとり」という人の心の中を見抜くとされる妖怪と、人を真似するとされる「山彦」の伝承が同根のものであろうと示唆している。

「和漢三才図会」によると、中国だけではなく「攫」という猿人は日本にもいると信じられていた。
飛騨、美濃(岐阜県)の渓山中にいる猿に似た獣。大きく黒毛で長毛。よく立って歩き、またよく人語を話す。人の意向を予察してあえて害はない。山人はこれを黒ん坊とよんで、どちらも怖れない。もし人がこれを殺そうと思うと、早くその心を知って逃げ去る。寺島良安「和漢三才図会」より
地域によって様々な容姿・呼び方
「山彦」は、容姿も呼び方も地域によって異なっている。
山彦の「彦」は、男に対する美称であるが、山彦が男子の精霊であると考えられて「山ン坊」「山小僧」「山子」などと呼ばれる。
また、水木しげる生誕の地である鳥取県では「呼子」と呼ばれていて、一本足の妖怪で描かれています。
木の精霊・山の神が山彦に化身
「彭候」とは、中国に伝わる木の精霊のことをいいます。
中国では樹齢千年を超える古木には、精が宿ると考えられ木のウロの中に黒犬のようなものがいるとされました。
これが、日本の「木霊(木魂)」と同一視されました。
「木霊」も山や谷で音が反響して聞こえてくるものなので、同じ性質であるということで。
「彭候」と書いて「こだま」とも呼ばれる。
「木霊」は、「響」という言葉に由来し、山彦は、木霊が化身したものだとされるという伝説もあったようです。
木の精霊や山の神様が姿を変え、声や音を出し、獣のような怪しい妖怪として現れるものとして信じられていました。
島根県の山彦伝説
島根県の隠岐の島では、山彦のことを「呼子鳥」と呼び、鳥の姿をしていると言われる。
福岡県八女郎群の山彦伝説
「山おらび」とは、主に九州地方の伝説に残る怪物。
「おらぶ」とは、「大声で叫ぶ」という意味です。
山に入った人が「ヤイヤイ」と叫ぶと、「山おらび」という怪物がこれに負けず「ヤイヤイ」と叫び返してくる。これを繰り返すとその叫び返す声はだんだん大きくなり、ついにはすさまじい叫び声で返されて殺されてしまうといわれる。この時には、割れ鐘(ひびの入った鐘)を叩くと山おらびのほうが負けるとされる。
まとめ
伝説からも、山彦の起源や種類は、さまざまなものがありました。
「覚」のような猿人のものや、「彭候」や「木霊」のような木の精霊、山の神のような存在のものもあり、単一ではありませんでした。
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